近年、「予防治療」という言葉をよく目にするようになりました。
予防治療とは、歯周病や虫歯などになってから治療をするのではなく、虫歯や歯周病にかからないよう、積極的に取り組む治療のことをいいます。
「歯医者に行くのは悪くなってからで十分」、と思っている人がまだまだ多いのが日本の現状ですが、そのような対処をしていると、次々に歯を失う可能性が高くなります。
実際に、多くの先進諸国が予防治療に力を入れてきており、着実に歯の残存歯数を増やしてきています。
当院では、「お口の健康と素敵な笑顔を、世代を超えて守り続ける」という医療理念に基づいて予防専門フロアを設置し、皆様の歯の健康をお守りする予防治療を実践しています。
「予防歯科」が重要な理由
セルフケアでは落とせない汚れが
約40%もある
予防において、セルフケアには非常に重要な意味があります。特に予防を意識していない人でも、ほとんどの方は毎日歯を磨いています。
しかし、日本人の平均的なセルフケアでは、お口の汚れ(歯垢)は60%ほどしか落とせません。つまり毎回、約40%の汚れを磨き残しているのです。この40%の汚れを落とすのが、歯科医院における歯石除去やクリーニングです。
40%の汚れを残したままでいると、当然ながら、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。歯科医院では、正しい知識を持った歯科衛生士が、専用の器具を用いて、徹底的に歯垢・歯石を落とすことができます。
時間の経過とともに
歯垢・歯石が蓄積する
毎日の食事によって歯の表面につくザラザラしたものが「歯垢(プラーク)」です。
そして歯垢は、先述の通りセルフケアだけでは60%ほどしか落とせません。磨き残された歯垢は、数日ほどそこに留まると、硬い「歯石」となります。
一度歯石になってしまうと、歯ブラシやフロスでは落とせません。歯科医院で、専用の器具を用いて除去してもらう必要があるのです。
歯石には歯垢が付着しやすい性質があるため、歯石が多くなると、虫歯や歯周病のリスクが高くなってしまうのです。
一度虫歯・歯周病になると
もとに戻りにくい
虫歯や歯周病は、かかってしまったらもちろん治療が必要です。治療しなければたちまち歯がダメになってしまうでしょう。でも、なぜ、虫歯や歯周病にかかってしまってからより予防する方が良いのでしょうか?
その理由は、「虫歯や歯周病というのは、一旦悪くなると元のように健康な状態に戻すことが難しいから」です。しかも進行していればしているほど、健康な状態に戻すことが難しくなり、治療してもせいぜい「進行をストップする」ことしかできません。
さらに、虫歯や歯周病というのは、一旦かかってしまうと再発しやすくなりますので、虫歯や歯周病を積極的に予防していくことが、健康な状態を保つ最も簡単、かつ確実な方法だと言えるのです。
妊婦さんの場合、
口内環境が悪化しやすい
妊娠中は、そうでない時に比べてお口の中の環境が悪化しがちで、虫歯や歯周病などのお口のトラブルが起きやすくなります。その理由として、ホルモンバランスの変化や、つわりによる食事の仕方の変化、お口の清掃状態悪化などが挙げられます。 妊婦さんのお口の状態が悪くなると、生まれてくる赤ちゃんにいくつか悪い影響が出てくる可能性があります。そのため、妊娠中には特に、虫歯や歯周病を防ぐケアが大切になってきます。
“噛むこと”が
全身の健康につながる
シニア世代になってもいきいきと暮らしていくためには、「しっかりと噛める」ことが大切です。しっかりと噛めることで、好きなものを食べることができ、充実した食生活を送ることができますし、体の体幹バランスや運動機能が高まり、健康を維持しやすくなります。また、よく噛むことで、脳の血流が良くなり、認知症予防にもつながります。
また、健康維持のためにはお口の衛生状態をよくしておくことも重要です。お口の中には多くの細菌が住んでいますが、お口の衛生状態の良し悪しによって、様々な感染症にかかるリスクも違ってきます。 シニア世代の方ほど、予防歯科を活用していただき、お口の健康を守っていただくことが大切なのです。
シニア世代に起こりやすい
トラブル
歯に汚れが蓄積しやすい
加齢現象によって唾液の分泌が悪くなるのに加え、持病などで複数の薬を飲むことが多くなってくるため、その副作用でさらに唾液の分泌が落ちてしまいます。
そうすると、唾液によってお口の中が十分に洗い流されないため、歯に汚れが溜まりやすくなります。
歯周病が悪化する
以前からかかっていた歯周病がだんだんと進行し、歯がグラグラしてきたり、抜けたり、というようなことが起こってきます。また、高齢になるにつれ、糖尿病や骨粗鬆症、高血圧症にかかっている人の割合が増えてきますが、このような病気は歯周病を悪化させたり、飲んでいる薬のせいで歯周病を悪化させたりすることがあるため、より注意が必要になります。
虫歯リスクが高まる
唾液が少なくなることによって歯垢が溜まりがちになってしまうため、歯茎が下がって露出した歯根に虫歯ができやすくなったり、進行しやすくなったりします。
口臭が強くなる
唾液が少なくなり、お口の中に歯垢や汚れが溜まりやすくなるのと、歯周病や虫歯の悪化、そして細菌の温床となった入れ歯から匂いが出やすくなります。
お口の粘膜にトラブルが起きる
お口の粘膜が唾液で十分に保護されなくなってしまうため、口内炎や口角炎を起こしやすくなります。また、お口の中のケアが不十分になりがちで、カンジダ症を起こしやすくなります。
飲み込む機能が低下する
お口周囲の筋力が低下してくることにより、飲み込む機能が低下し、食事中に食べこぼす、むせる、ということが多くなります。また、お口の中に食べカスが残りやすくなります。
子どものための予防歯科
子どもの予防歯科の重要性
お子さんの予防歯科では、虫歯の予防が中心になります。
なぜ、子どもの虫歯予防が大切なのかをご説明します。
歯並びの乱れの予防につながる
重度の虫歯で本来よりも早く乳歯を失った場合、他の乳歯が移動したり、生え替わりの順番が前後したりして、永久歯が正しく生えない可能性が高くなります。
顎・身体の発育に良い影響を与える
何でもよく噛んで食べることは、顎や身体の発育にも、良い影響を与えます。しっかりと細かくしてから飲み込めるので、栄養の吸収効率も良くなり、胃腸に負担をかけません。
顎の発育は、歯がきれいに並ぶためのスペースの確保(歯並びの乱れの予防)にもつながります。
学業・スポーツで十分に力を発揮できる
よく噛めることで脳が刺激されることで、集中力のアップなどが期待できます。
また、しっかりと噛めること、身体の発育が促されていることから、スポーツでの成績向上にもつながります。
学業でもスポーツでも、その成功体験は、精神面の成長をもたらします。
予防歯科のメリット
虫歯や歯周病に
かかりにくくなる
予防治療を積極的に行っていくと、お口の細菌環境が良くなっていきます。その結果、虫歯や歯周病にかかりにくいお口の状態になります。
しかも、定期的に歯科に通うことで、早期の異常もすぐに見つけられるため、何かあった場合でも歯のダメージを極力抑えることができます。
心身の健康を保ちやすくなる
体の健康状態はお口の健康状態と密接に関連しています。最近、歯周病と体のあちこちの病気との関連も次々に指摘されてきています。
それゆえ、予防治療を受けていると、お口の健康状態が良くなり、それが体の健康改善につながっていきます。
また、歯に悩まされることが断然少なくなりますので、歯からくる心身的ストレスも感じることがなくなります。
治療の身体的・金銭的負担が
減る
まず、歯が悪くなってから治療を受ける場合、悪化しているほど治療そのものが大変になります。また、状態が悪化しているほど治療費が高くなり、通院回数も期間も長くなります。
一旦治療をして落ち着いたとしても、また「悪くなってから通う」ということを繰り返していくうちに、だんだんと歯は悪化していき、その度に治療費がかさんでいきます。
一方、予防治療を積極的に行う場合、定期的に治療費がかかるので、多くの方は「治療費がたくさんかかる」と思われるようです。
でも実際のところは、お口の状態が常に良い状態で保たれるので、削ったりかぶせたりというような治療の必要性がなくなり、結果的には費用を抑えられるのです。
しかもお口は常に爽やかで気持ちの良い状態が保たれます。
【世代別】予防歯科のポイント
0~2歳頃までの予防
虫歯菌をうつさないように
気をつける
虫歯菌は、乳歯の前歯が生えた後、離乳期に周囲の人からうつって定着し始め、3才を過ぎると保菌者率は急上昇するといわれています。また、虫歯菌に感染する時期が早いほど、お口の中に住む虫歯菌が多くなるという結果が出ています。 赤ちゃんになるべく虫歯菌をうつさないようにするためには、唾液を通じての感染に気をつける必要があります。そのためには、以下に注意しましょう。
- コップやスプーン、フォークなどを共有しない
- 口移しをしない
- 飲み物の回し飲み、親が口をつけたものを食べさせない
お口の中に糖分が残らないように
気をつける
虫歯は虫歯菌が糖質をエサにして酸を作り出し、その酸が歯を溶かすことで起こります。ミルクや砂糖入りの飲み物をだらだらと時間を決めずに与えたり、寝かしつけの時に与えたりすると、虫歯リスクは大きく高まります。
糖分を含む食べ物にも注意が必要ですが、特に1〜2歳くらいの頃は、だらだらと糖分の入った飲み物を与えることによってできる虫歯が多いと言えます。
極力お口の中に糖分が残らないよう時間を決めて与える、水分補給は水かお茶にする、などに気をつけるとよいでしょう。
歯磨きに徐々に慣らしていく
初めての乳歯が生える頃は、ガーゼや綿棒で優しく拭うところから始め、徐々に赤ちゃん用の歯ブラシで磨いてあげるようにしましょう。
最初の頃は徐々に歯ブラシの感覚に慣れさせていくことを目標にします。赤ちゃんの歯磨きで気をつけたいポイントとして、唇から上の前歯の真ん中に伸びるヒダ「上唇小帯(じょうしんしょうたい)」があります。
磨く際にこの部分を歯ブラシで触ると痛がり、その後の歯ブラシを嫌がってしまう原因になりますので、このヒダの部分を反対の指でカバーするなどして、傷つけないように気をつけましょう。
歯ブラシは1日に2回が理想です。夜寝る前には特に念入りに磨いてあげましょう。
定期的に歯医者で
検診・予防処置を受ける
乳歯は構造的に弱く、虫歯にかかりやすいため、歯科医院で定期的にお口の管理とフッ素塗布を受けましょう。フッ素塗布をすることで、歯を強くしたり、虫歯菌の働きを弱めることができます。
定期的に専門家にお口の状態を見てもらうことで、異常があってもいち早く対処することができますし、お子さんご自身も赤ちゃんの頃から通うことで、歯医者を「怖いところ」ではなく、「歯の健康を保ってくれるところ」という認識をはぐくみやすくなります。
3~6歳頃までの予防
乳歯の虫歯を作らない、
進行させない
3歳くらいになると、いろいろなおやつを口にし始めます。甘いものをどんどん欲しがり、しっかりとコントロールしていないとたちまち虫歯ができてしまう時期でもあります。
乳歯は永久歯に比べてエナメル質が半分しかないので、虫歯もあっという間に進んでしまいます。また、奥歯の歯と歯の間のような見えにくい場所にも虫歯ができやすいため、油断ができません。
乳歯の虫歯は要注意!
乳歯の虫歯は永久歯にも影響を及ぼします。例えば、永久歯に虫歯ができやすくなったり、変色させてしまうこともあります。また、乳歯の虫歯がひどくなって早く失ってしまうと、永久歯の歯並びにも影響が出てきます。
そのため、この時期には乳歯の虫歯を徹底的に予防していくことが大切です。
歯並びを悪くする癖に要注意
歯並びを悪くしてしまう大きな原因として、「お口周辺の癖」というものがあります。例えば、指しゃぶり、唇を噛む癖、口呼吸、舌を突き出す癖、ほおづえなどです。
このような癖がある場合、放置しておくと歯並びだけでなく、お顔の骨格形成にも異常をきたしてしまうことがありますので、気がついたら早めにやめさせていく必要があります。
6~12歳頃までの予防
新しく生えた永久歯を
虫歯にさせない
6歳頃になると、乳歯の後ろから6歳臼歯と呼ばれる大きな永久歯が生えてきます。乳歯とは違って立派な大きい歯ですが、生えたての6歳臼歯は隅々まで磨くのが難しく、また、歯の質が完全に出来上がっていないため、とても虫歯になりやすい弱点があります。
この他にも次々に乳歯が抜けて永久歯が生えてきます。他の永久歯も生えたばかりの時は弱いため、より念入りにケアをする必要があります。
特に虫歯リスクの高くなる時期
小学生くらいになると、一人で歯磨きをさせるご家庭も多いのではないかと思います。「もう大きいのだから歯磨きは自分でしなさい」というのもわかります。でも、高学年に上がる前のお子さんというのは、まだまだ隅々まで磨くのが難しいものです。
特に、乳歯から永久歯へと生え変わっていく学童期は、歯の高さがまちまちになることも多く、特に磨き残しが多く出やすい傾向があります。
お子さんが高学年に上がるくらいまでは、1日に1回、夜だけでも親御さんが仕上げ磨きをしてあげることが理想です。
必要に応じてあごの成長を
コントロール
永久歯に生え変わるタイミングで矯正治療を行うことで、あごの成長をコントロールしながら矯正治療を進めていくことができます。
小児期に矯正治療をすることで、あごの輪郭を正常な状態に整えながら、健全な歯並びを作り上げることができる大きなメリットがあります。
ただし、矯正治療を始めるベストなタイミングは、お子さんによっても異なります。定期的に歯科に通うことで、お子様の歯並びの状態を見ながら、必要に応じて提案させていただきます。
中高生の予防
自分で歯の健康を守る意識を
つける
一般的に、中学生になると、親御さんがお子さんの口の中を見ることはほとんどなくなります。親の管理下を離れ、お口の管理を完全にお子さん自身がするようになるこの年頃は、お口のケアがおろそかになりがちです。
でも、歯質は決して強いと言えないこの時期、虫歯リスクはまだまだ高く、一旦虫歯にかかると進行しやすいのも注意したいところです。
親の手を離れ、定期的な予防ケアで、ご自分で歯の健康を守る意識をつけていくことが大切です。
食生活の乱れで
虫歯ができやすいので注意
中学生になると、部活動やクラブ活動などの課外活動、塾や習い事などで食事の時間が不規則になりがちです。また、おやつも自分たちで買い食いをするようになるなど、自分で好きなものを好きな時に食べるようになります。
このようなことからこの時期は一気に虫歯リスクが高まります。歯磨きも親が管理することがなくなるため、磨かなかったり、磨き方がいい加減になったりしがちです。そのため、永久歯の虫歯は思春期くらいに頻発します。
永久歯は乳歯と違って生え変わることはありません。この時期に虫歯をたくさん作ってしまうと、将来的に困ったことになってしまいます。
自分でしっかりとお口の中が管理できるようになるためにも、定期的な歯科検診にお越しください。
大人の予防
気付きにくい「歯周病」に
気を付ける
歯周病は日本においては、成人の8割がかかっているか、その予備軍だと言われています。現時点では、歯周病にかかっていない人の方を見つけるのが難しいという状況ですが、これは、「年をとったら歯周病にかかるもの」だからなのではなく、歯周病に対する正しい予防法を知らないゆえに、このような状況になっていると言ってよいでしょう。
歯周病はひどくなるまで自覚症状をあまり出さない病気です。そのため、残念なことに、多くの人は歯周病がある程度進行してしまってから歯医者を受診している状況です。
歯周病は進行してからでも治療をすることは可能なのですが、悪化してしまってからだと骨がかなり失われてしまっているため、治療が大変になったり、治療の効果が出にくくなってしまったりします。
歯周病によって歯を失ったり、歯周病の症状で困ることが多くなるのは、50〜60代以降など、ある程度年齢が上がってからのことが多いですが、実は歯周病の多くは、30代くらいから始まっています。
ですが、多くの人がそのことに気がついていません。もしくは、「歯周病かな」と思っていても大した症状が出ないため、放置していることが多いようです。でも歯周病は進行性の病気ですから、放置していれば確実に状況は悪い方向に向かってしまいます。
歯周病は若いうちからセルフケアをしっかりと行い、歯医者での定期的な予防ケアをしておくことで、予防や進行を止めることが可能です。
進行してから慌てないためにも、若いうちから定期的な予防ケアを習慣づけておきましょう。
予防ケアで全身の病気も防ぐ
虫歯や歯周病によるお口の環境の悪化は、全身の健康状態に影響を与えることがわかっています。特に歯周病の原因菌やその毒素が血管などに入り込んで、全身のあちこちで病気を起こすことがわかってきており、問題になっています。
糖尿病が歯周病と大きな関連があることは以前から知られていましたが、そのほかにも心臓病や脳梗塞、早産などのリスクを高めることもわかってきました。
歯の予防ケアを積極的に行うことで、歯周病菌が引き起こす命に関わる病気も未然に予防できる可能性が高くなります。
一人ひとりに適した
予防歯科プログラム
お口の状況は、一人一人異なります。そのため、虫歯リスクが高い方、歯周病リスクが高い方、入れ歯をお使いの方、インプラントが入っている方、妊娠されている方など個々の状況に応じ、最適な予防プログラムを行なっていきます。
予防ケアを行う間隔は、患者様お口の状況や、リスクの程度に応じて変わってきます。
予防プログラムの一例
- 定期検診
- 徹底的なクリーニング(PMTC)
- 一人一人に合わせたブラッシング指導
- 食事・生活習慣指導
- フッ素塗布(虫歯リスクに応じて)
シニア世代の予防
しっかりと噛める状態を
維持していく
シニア世代の方が健康を維持し、いきいきとした毎日を過ごしていくためには、よく噛めることが重要だと冒頭でも触れました。
よく噛める状態を維持するための具体的な方法として、以下が挙げられます。
- 歯科で予防的なメインテナンスを怠らず、今あるご自分の歯を良い状態で保ち続けられるようにする
- 入れ歯をお使いの場合にもお手入れと定期的なメインテナンスを怠らず、良い状態で使い続けるようにする
「今特に調子は悪くないし、何か問題が起こったらその時に歯医者へ行こう」という姿勢では、残念ながらしっかりと噛める状態はキープしにくくなります。
ぜひ、積極的に良い状態が保てるように定期的なメインテナンスを受けるようにしましょう。
お口の衛生状態を改善して
感染症を防ぐ
シニア世代になると、飲み込む機能の低下や、唾液の減少など、お口のはたらきにもトラブルが起こってきます。
飲み込む働きがうまく行かなくなり、さらに体力や免疫力が低下すると、お口の中で増殖した細菌が、眠っている間や食事中に唾液や食物と一緒に気管の方へ入ってしまい、「誤嚥性肺炎」を起こしやすくなります。
特に高齢者の方にとって、誤嚥性肺炎は寝たきりの原因になりかねませんし、ひどい場合には命に関わることも少なくないため、注意が必要です。
積極的に予防歯科治療を行い、お口の衛生状態をよくしておくことで、このようなリスクを大幅に下げることが可能になります。
インフルエンザなどの
感染症にも効果が!
最近では、お口の衛生状態をよくしておくことで、インフルエンザなどの感染症の予防効果があることもわかってきました。お口をきれいにすることで、虫歯や歯周病を防げるだけでなく、体の健康を守ることにも役立つのです。
体の健康維持のためにもぜひ、予防歯科治療を定期的に受けるようにしましょう。
当院で行う予防歯科の特徴
予防専用フロア
「オーラルケアセンター」をご用意
オーラルケアセンターは当院が予防専用に設置した、「予防」に特化したフロアです。
治療を終えられた方をはじめ、定期的な検診を受けたい方などにご利用いただいています。
完全個室のメインテナンスルームは、ホテルの内装を思わせる、時間を感じさせない静かでゆったりとした心地のよい空間となっております。
個室内はほんのりとアロマの香りが漂い、リラックスした気分でお口のケアを受けていただくことができます。
エステサロンのような60分ケア
担当衛生士が約60分間、たっぷりと時間をかけ、患者様一人一人に合ったお口のケアを丁寧に行います。ケアが終わった後は歯もピカピカ、お口もサッパリして爽やかな気分になるのを実感していただけることでしょう。エステサロンに行くような感覚でぜひお気軽にいらっしゃってください。
“歯周病専門医”監修の
予防プログラム
当院の予防治療は、歯周病専門医が監修する予防プログラムを提供していることが最大の特徴です。
成人が歯を失う原因の第一位、二位をしめる歯周病、虫歯を積極的に予防していくのはもちろん、悪い部分があって治療をするのが望ましい場合には、専門的な治療も行いながら、最善を尽くしていきます。
Point.01
歯の表面の汚れだけでなく、歯周ポケット(歯と歯ぐきの境目)の汚れもクリーニングします。
Point.02
歯周病の進行を見逃さないよう、お口の中の写真・レントゲンを撮影し、経過観察を行っています。
Point.03
歯周病が発見された場合は、歯周病専門医による専門治療を行うことで、条件によっては元の状態に再生することも可能です。
Point.04
虫歯が見つかった場合、当院では無条件に削って詰めて、という治療はいたしません。
将来できるだけ歯を残すために今できる最善策を患者様といっしょに考えます。
以上のポイントを、患者様個人のリスク(口腔内、生活習慣など)を把握した上で、そのリスクを下げるよう働きかけながら行なっていきます。
日本歯周病学会認定 歯科衛生士が在籍
歯科衛生士の知識・技術次第で「歯を残せる、残せない」も変わってきます。
当院の歯科衛生士は歯周病専門医指導のもと、予防・メインテナンスのプロフェッショナルとして患者様1人ひとりに合わせた、きめ細やかな予防プログラムを実行しています。
より高度な技術を修得するためには、衛生士学校の基礎教育だけでは足りない部分もあるため、院内・院外において継続的に教育を受けています。
当院には日本歯周病学会認定歯科衛生士が在籍し、まだ取得していない歯科衛生士は、日本歯周病学会認定歯科衛生士の取得を視野に入れて日々精進しています。
子どもの予防治療にも
力を入れています
お子さんのお口の中は大人とは違います。そのため、大人の方とは違ったアプローチの仕方で予防治療を進めていく必要があります。
もちろん、ただ歯の表面の汚れや歯石を取るだけの治療ではなく、将来的にも虫歯や歯周病になりにくいお口を維持できるために、今できるベストな治療法を進めていきます。
例えば、虫歯や歯並びの定期的なチェックはもちろん、歯を強くするフッ素塗布、ご家庭で効果的な歯磨きができるような歯磨き指導、そして、将来的に健全な歯並びやあごの成長を作り上げ、健全なお口を保ちやすくするための治療も行っていきます。
お子さんが健康な口元を保ち続けられることは、お子さんの未来にとって大きな贈り物となります。未来のお子さんへ素晴らしいプレゼントとなるよう、私共も精一杯お手伝いさせていただきます。
当院で行う予防歯科のメニュー
歯石除去(歯石取り)
歯垢が石灰化した「歯石」を、専用の道具で除去します。歯冠部だけでなく、歯周ポケットの浅い部分まできれいにします。
歯石は、歯ブラシでは除去できません。細菌の繁殖の温床となるため、歯科医院で定期的に、取り除いてもらう必要があります。
PMTC(歯のクリーニング)
プロのクリーニングで虫歯や歯周病にかかりにくく
PMTCとは、歯科医師・歯科衛生士といった専門家が、特別な機械を用いて行う歯面清掃です。歯や歯茎を傷つけることなく、セルフケアでは落としきれない汚れを取り除きます。
歯面はツルツルになり、気分も爽快です。飲食、喫煙などによる着色を落とすこともできます。
PMTCの効果
歯質の強化
歯と同じ成分を配合したペーストを使用することで、歯質を強化し、歯垢の付着や着色を防ぎます。仕上げとして行うフッ素塗布も、歯質の強化に役立ちます。
虫歯・歯周病予防
歯垢や歯石を除去することで、虫歯菌・歯周病菌の数が減り、虫歯・歯周病のリスクが低減します。
歯茎の炎症の改善
口内の細菌が少なくなることで、歯茎で起こっていた炎症が改善します。歯茎の引き締め効果も期待できます。
着色落とし
コーヒー、ワイン、カレー、ミートソースなど飲食物、あるいは喫煙などによる歯の着色を落とすことができます。
※ホワイトニングのように、歯そのものを漂白する効果はありません。
ブラッシング指導
ご自宅で効果的な歯磨きができるように
歯医者での予防ケアはとても大事です。ですが、最も大切なのは、ご自宅で行う歯磨きなどのセルフケアです。これがきちんとできていなければ、虫歯や歯周病を予防することはできません。
虫歯や歯周病のかかりやすさというのは、実は歯磨きの仕方の良し悪しも大きく関係しています。実際、ほとんどの人が毎日歯磨きを「して」はいますが、正しい方法でできているかというと、ほとんどの方は残念ながら正しい磨き方ができていません。
間違った磨き方を続けていてはせっかくの歯磨きも無駄になってしまいます。
当院では、患者様のお口の状態に合わせ、一人一人に最適な磨き方を丁寧に指導させていただきます。
フッ素塗布
虫歯に負けない歯を作る
フッ素を歯に塗ると、歯の表面からフッ素が取り込まれて結晶を作り、普通の歯よりも強くなって、虫歯菌が酸を出しても溶けにくくなります。
フッ素には虫歯になりかけた歯を修復する働きもあります。これにより、初期虫歯が治ってしまうこともあります。
フッ素には抗菌作用もあるので、虫歯菌の活動も抑えてくれます。
フッ素にはこのように歯を強化してくれる効果があるため、特に歯の質が弱いお子さんにとっては非常に効果的です。中学生くらいまでは定期的にフッ素塗布を受け、虫歯に負けない歯を作っていきましょう。
エアフロー
着色を落としながら歯周病菌を除去
エアフローは、歯面清掃を行う機械の一種で、非常に細かなパウダー粒子をジェット噴射で歯に吹き付けることにより、歯にこびりついた汚れを効果的に落とすことができる、というものです。 一般的には、歯科医院で主に歯の着色やヤニ除去の用途として使われていますが、歯周ポケット内の歯周病の細菌除去にも効果が高いため、当院では歯と歯茎の健康のためにも、エアフローによるクリーニングを積極的におすすめしています。 当院では、予防歯科で有名な、スウェーデンのイエテボリ大学で使用されている機械を使用しています。
このような方におすすめ
- タバコのヤニ、ステイン(着色)が気になっている方
- くすんだ歯の白さを蘇らせたい方(※)
- 歯の健康を積極的に保っていきたい方
- いつもスッキリと気持ちのいいお口を保ちたい方
- 矯正治療中の方
- 詰め物・被せ物・差し歯・インプラントなどの人工物が入っている方
(※)エアフローは外来性の着色は落としますが、本来の歯の色自体は白くできません。歯自体を白くしたい場合にはホワイトニングが必要です。
エアフローが歯周病予防に
効果的な理由
通常の歯石を除去する機械や器具でも、弾き飛ばしたり、擦り取ったりすることで、ある程度の着色や細菌を除去することは可能ですが、器具が届く限界があるので、細部まで取り切ることはできません。エアフローの場合、超微細パウダーを使用しますので、歯の間や歯周ポケット内部といった細かい部分にも隅々までパウダーが入り込み、従来の器具・機械が入らない部分でも効果的にお掃除をすることができます。そのため、歯周病菌をいかに取り除くか、ということが要となる歯周病治療において、エアフローはとても重要な役割を果たすと言えるのです。
エアフローのメリット
- 清掃効果が高い
超微粒子パウダーによるクリーニングは、歯にこびりついてしまった頑固なヤニや着色も、効果的に、そして短時間で落とすことができます。また、通常のクリーニングでは、器具が届くのが歯周ポケットの内部せいぜい3mm以内くらいであり、それ以上は十分な清掃ができないと言われています。でも、エアフローであれば、細かい粒子が4mm以上の深いポケットにも届くため、より確実に歯周病を予防できます。
- 短時間できれいになる
エアフローは、高圧洗浄機のように、細かい部分まで効率よく汚れを落とすことができます。そのため施術も短時間で済ますことができます。
- 歯や詰め物・被せ物を傷つけにくい
エアフローでは、超微粒子のパウダーを使用します。そのため、従来の「研磨剤とブラシやラバーカップなどにより機械的に擦り落とすクリーニング」と比べ、歯や、詰め物・被せ物などの人工物を傷つけずに優しくクリーニングできるのも特長です。
- 歯石や着色がつきにくくなる
術後は歯垢や歯石、着色の再付着が起こりにくくなります。
エアフローのデメリット
- 保険がきかない
エアフローは、着色を落とす目的、そして健康増進を目的として行われる処置であるため、健康保険の適用外となります。
- お体の状態によってはできない場合がある
妊娠中の方、放射線治療中の方、呼吸器疾患の方、ナトリウム摂取制限を必要とする方は安全性を考慮し、基本的に施術をお断りさせて頂いております。
- まれに知覚過敏のような症状を感じることがある
エアフローでは、知覚過敏や痛みが出ない工夫がなされています。国内外の論文を見ても知覚過敏が起こりにくく、知覚過敏がすでにある方にも有効という報告がされておりますが、パウダーを吹き付ける圧により、一部の方が知覚過敏のような刺激を感じることもまれにあります。